賃貸管理コラム
サラリーマンが大家になるのは、本業の収入を活かして始められることから、おすすめの選択と言えます。
サラリーマン大家の仕組みやメリット・デメリット、始め方や気をつけたいポイントまで、分かりやすく解説します。
実際に多くの会社員が副業として賃貸経営に取り組んでいます。
とはいえ、「どんな仕組みで収入が得られるのか」「管理の手間はどの程度かかるのか」など、気になることも多いでしょう。
ここでは、サラリーマン大家としての働き方を分かりやすく解説していきます。
マンションやアパートなどの物件を購入して他人に貸し出し、毎月の家賃収入(インカムゲイン)を得るのが基本的な仕組みです。
物件を保有し続けることで、長期的に安定した収入を得られるのが魅力です。
不動産にはもう1つ、「売却益(キャピタルゲイン)」という収入の形もあります。
これは、購入した物件を将来的に高値で売却し、その差益で利益を得る方法です。
うまくいけば大きな利益を狙えますが、物件選びや売却のタイミングの見極めが難しいため、相場を常にチェックする時間がない会社員には向いていません。
そのため、サラリーマン大家のように副業として賃貸経営を始める場合は、リスクを抑えながら資産形成を目指す家賃収入(インカムゲイン)から始めるのが基本と言えるでしょう。
入居者管理の主な内容は以下の通りです。
建物管理の主な内容は、以下の通りです。
これらの管理・運営には、自分で対応する「自主管理」と、不動産会社に任せる「管理委託」の2種類の方法があります。
これらの運営方法について、それぞれのメリット・デメリットを紹介します。
【自主管理のメリット】
【自主管理のデメリット】
なお、自主管理でも、入居者募集のみ不動産会社に委託することが可能です。
ただし、不動産会社からすると、まずは管理委託を受けている物件の空室を埋める必要があります。
そのため、自主管理の物件は、入居者を紹介する優先順位が低いこともあります。
【管理委託のメリット】
賃貸経営の実務は幅広いため、会社員をしながらすべてを自分でこなすのは現実には難しいこともあります。
時間や労力のバランスを考え、自分にとって無理のない方法を選んでください。
(※)参考:公益財団法人日本賃貸住宅管理協会|第28回賃貸住宅市場景況感調査
結論から言うと、実際に多くの会社員が賃貸経営に取り組んでいます。
国土交通省が実施した調査によれば、賃貸住宅の所有者のうち約4割が会社員です。
このことから、賃貸経営は一般の会社員にも広まっていることが分かります。
もちろん、資金計画やリスク管理は欠かせませんが、会社員が大家になることは十分可能です。
過去の推移を見ても、平成28年の約512万円から少しずつ増えており、安定した右肩上がりの傾向がうかがえます。
【不動産所得者の年代別平均所得金額】
年代 | 所得金額 | 平成28年 | 512万円 | 平成29年 | 517万円 | 平成30年 | 518万円 | 令和元年 | 521万円 | 令和2年 | 540万円 | 令和3年 | 543万円 | 令和4年 | 543万円 | 令和5年 | 547万円 |
順番に解説します。
賃貸経営は初期費用が大きく、すぐに黒字になるとは限りません。しかし本業の収入があることで、収益化までの期間を無理なく乗り切れます。
また、物件の購入にはまとまった金額が必要ですが、会社員は安定収入があることから金融機関の融資を受けやすいメリットもあります。
たとえば、転職やリストラ、ボーナスのカットといった予期せぬ変化があっても、一定の家賃収入があれば生活を安定させやすくなります。
また、家賃収入を積み重ねていくことで、将来的な独立や早期リタイアといった選択肢も視野に入ってくるでしょう。
物件の管理や入居者対応といった実務は、不動産管理会社に任せることで手間を減らせます。
時間的コストを最小限にしながら資産形成できるのは、忙しい会社員にとって大きなメリットです。
1つずつ解説します。
膨大な情報に振り回され、物件探しの段階で疲れてしまうことも少なくありません。
知識や経験が乏しいまま、すべてを1人で判断しようとすると、誤った物件選びにつながってしまいます。
こうした負担を軽減するには、賃貸経営に精通した不動産会社の力を活用することも必要です。
空室リスクとは、入居者が決まらずに物件が空き家となり、その間の家賃収入が得られないリスクのことです。
賃貸経営では、入居者がいてはじめて家賃収入が発生します。したがって、空室が続けば収入が途絶えてしまいます。
一方で、ローン返済や固定資産税などの支出は空室中でも発生するため、経済的負担が重くなります。
こうしたリスクを減らすには、需要のあるエリアや物件を慎重に選ぶことと、あらかじめ空室期間を見越して余裕を持たせた資金計画を立てておくことが重要です。
また、管理委託する会社は、入居者募集のノウハウや実績がある点を重視して選びましょう。
賃貸経営は不労所得と思われがちですが、実際には多くの手間と判断が必要なビジネスです。
「物件を購入したら、後はほったらかし」ではなく、入居者募集・家賃回収・建物管理・クレーム対応などの業務が継続して発生し続けます。時間に制約がある会社員にとって、こうした業務をすべて自力でこなすのは現実的ではありません。
対策としては、不動産管理会社に管理を委託することです。入居者対応や物件の維持管理などを管理会社に任せることで、本業への影響を最小限に抑えられます。
ただし、管理を委託していても「家賃の見直し」「原状回復の方針」「売却の判断」など、最終的な意思決定はオーナー自身が下す必要があります。
副業として始める場合でも、一定の労力と意思決定が必要であることは認識しておきましょう。
以下に当てはまる人は、サラリーマン大家に向いていると言えるでしょう。
それよりも、継続的な努力をいとわずに丁寧に取り組める人に向いています。
したがって、結果を急がず腰を据えて取り組める人は、サラリーマン大家として成功しやすいと言えます。
知らないことを進んで学ぶ人は、成果を出しやすくなります。
また、経営で悩んだ時には、先輩大家や専門家にアドバイスを乞う場面もあるでしょう。
こうした人間関係を円滑に築ける人ほど、長く安定した賃貸経営を続けやすいと言えます。
事実、賃貸経営はさまざまな支出を経費として計上できるため、会社員の給与所得にかかる所得税や住民税の負担軽減につながります。
ここでは、節税のメリットを感じやすい人の年収帯や、効果を最大化するための方法について解説します。
この赤字は「損益通算」という制度を活用することで、会社員としての給与所得と相殺することが可能です。損益通算によって課税される所得が減るため、所得税や住民税の負担が軽くなり、その分手取りが増えるというメリットがあります。
「家賃収入があるのに赤字になるの?」と疑問に思う人もいるかもしれませんが、実は賃貸経営では「減価償却費」という経費の計上が可能です。
減価償却とは、建物などの資産が年数とともに価値が下がることを見込んで、価値の減少分を毎年少しずつ経費として処理できる仕組みのことです。
この費用は実際にお金が出ていくわけではないため、「支出を伴わずに帳簿上の赤字を作れる」という特徴があります。
この赤字を給与所得から差し引くことで、所得金額が下がり、結果として納める税金も少なくなります。
納税額は、
(給与所得 − 減価償却などを含んだ不動産所得の赤字) × 所得税率
という計算式で求められるため、もともとの所得税率が高い人ほど節税効果を実感しやすくなります。
たとえば、課税所得が900万円以上の人は所得税率が33%に達するため、減価償却を活用すれば大きく節税可能です。
一方で、所得税率が比較的低い場合は節税額がそれほど大きくならないため、「思ったほど得にならない」と感じることもあります。
不動産賃貸業を始める前に、自分の年収や税率を把握し、節税効果がどれほど見込めるかを把握しておくことが重要です。
参考:国税庁|所得税の税率
減価償却費は、「建物の構造」と「法定耐用年数」によって金額が決まります。たとえば、木造アパートの法定耐用年数は新築から22年、鉄筋コンクリート造のマンションであれば47年です。
中古物件になると残りの耐用年数が短くなるため、1年あたりに計上できる減価償却費が大きくなります。
したがって、耐用年数が短くなった中古の木造アパートを選ぶと、損益通算による節税効果を実感しやすくなります。
これらの費用も必要経費として計上できるため、領収書や明細は必ず保管し、確定申告時に漏れなく反映させましょう。
初年度は支出がかさむ分、経費計上するかどうかによって、納める所得税の額に大きな差が出る可能性があります。
賃貸経営では経費に計上できる項目が幅広いため、初めのうちは「何が経費にできるのか」分かりづらいものです。
減価償却や経費の判断には複雑な部分もあるため、不動産購入の際は、税理士と提携する不動産会社に相談すると安心です。
まずは、具体的なステップを時系列に沿って紹介し、あわせて「賃貸経営に資格は必要なのか?」という疑問について取り上げます。
それぞれについて、具体的に解説します。
目標が曖昧なままだと、住宅メーカーや不動産会社の提案に流されてしまう恐れもあります。
目標を立てる際は、以下のような具体的な視点で考えてみましょう。
たとえば「65歳までに、毎月5万円の家賃収入を得られるようにしたい」といった具体的な目標があると、物件選びや資金計画、管理方法などを決める時にも迷わなくなります。
方向性がはっきりすることで、成功する可能性も高まります。
この時に大切なのは、「自分がよく知っているエリア」や「自分好みの物件」にこだわるのではなく、入居者から選ばれる物件かどうかを基準に考えることです。
物件を比較・検討する際には、以下のようなポイントをチェックしましょう。
物件広告などでよく目にするのは「表面利回り」ですが、これは年間家賃収入÷物件価格 × 100で算出されるシンプルな数字です。
しかし、実際には空室も出ますし、税金や修繕費といったコストが継続的に発生します。
表面上は高利回りに見える物件でも利益が出づらいこともあるため、慎重に見極める必要があります。
申し込み時には物件の資産価値や自身の収入・勤続年数などが総合的に審査され、「どのくらい借りられるか」「返済能力に問題はないか」などが判断されます。
この時、「会社員としての安定収入」は金融機関から高く評価されるポイントです。特に、勤続年数が長く年収が一定以上ある人は、審査を通りやすいでしょう。
なお、融資の手続きや書類の準備はやや複雑です。不動産会社のサポートを受けながら進めていきましょう。
無事にローン審査に通過したら、いよいよ物件の売買契約を締結し、所有権移転登記を行います。
登記は自分で行うことも可能ですが、書類の不備や手続きの手間を避けるため、司法書士に依頼するケースが一般的です。こうして、物件を正式に取得すれば、晴れて不動産オーナーとなります。
サラリーマン大家の場合、本業の合間に自ら対応するのは困難なことから、管理会社に管理を委託するのが一般的です。
管理会社を選ぶ際は、以下のような点をチェックしましょう。
また、既存オーナーからの紹介が多い会社も信頼できる傾向があります。
よい管理会社を選べば、賃貸経営の負担を大きく軽減でき、家賃収入が安定します。
とはいえ、実務の多くは管理会社に委託し、自身は意思決定に集中するスタイルが一般的です。まずは、管理会社を通じて入居者の募集を開始し、申し込みがあれば入居審査をします。
家賃滞納のトラブルを防ぐためには、家賃保証会社との契約もあわせて検討しておくと安心です。
万が一、入居者がなかなか決まらない場合は、家賃の設定が適正かどうかや、物件の状態・周辺環境に問題がないかを見直す必要があります。
空室期間中であってもローンの返済は始まっているため、できるだけ早く入居者を確保したいところです。ただし焦って審査を甘くするのは、トラブルにつながる可能性が高まるため避けましょう。
また、賃貸経営には修繕やメンテナンスのコストもつきものです。突発的な出費に備えて、毎月一定額を修繕費として積み立てることをおすすめします。
自分で所有する物件を他人に貸し出すだけであれば、宅建業の免許も不要です。
そのため、誰でもサラリーマン大家を始められます。
ただし、賃貸経営には法律・税務・建物管理など幅広い知識が関わってくるため、基本的な知識を身につけておくことは有益です。
1.ファイナンシャルプランナー(FP)
資産運用や税制、相続、年金など、幅広いお金の知識を学べる資格です。
収支シミュレーションや資金計画に強くなるため、長期的な賃貸経営の安定のために有効です。
2.日商簿記3級
帳簿のつけ方や収支管理の基礎を学ぶことで、賃貸経営における会計処理や確定申告がスムーズになります。青色申告を活用した節税に役立ちます。
サラリーマン大家は、本業の安定収入を活かしながら資産形成を目指せる魅力的な仕事です。
すべてを自分で抱え込むのではなく、信頼できる不動産会社や管理会社と連携し、無理のない形で運営することが成功するためのポイントです。
物件選びや収支計画に時間をかけ、必要な知識を身につけた上で踏み出してください。
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