賃貸管理コラム
賃貸経営をしていく中で、管理会社を変更するケースがあります。変更理由はさまざまなものがありますが、新しい管理会社への引き継ぎはしっかりと行う必要があります。
管理会社変更時、引き継ぎに必要な書類や変更する具体的な流れについて解説します。
賃貸管理会社を変更する際に、新管理会社に引き継ぐべき書類があります。管理会社の変更があっても、入居者はじめ関係者に支障があってはなりません。
管理会社同士の間で引き継ぎされる場合であっても、オーナーがその内容を把握しておく必要があります。
契約関係で引き継ぎに必要な書類は以下のようなものです。
家賃債務保証の利用が進んでいる現代では、上記3つの書類は必ずあるといえるでしょう。さらにあると便利なのが「入居審査申込書」です。
家賃の滞納や入居者の行方不明などトラブルが発生したときに、契約書には記載されていない情報を入居審査申込書から取得できる可能性もあり、新規の管理会社にとって思わぬときに役に立つ書類です。
また欠かせないのがレントロールです。入居を一覧で把握でき入居日の記載があると、管理のうえでさまざまな判断が必要なときに役立ちます。
賃貸管理関係では以下のような書類があると便利です。
建物管理業務報告書は維持メンテナンスの記録や、設備関係の劣化や故障など将来のメンテナンス業務について参考になるデータが記録されています。
リフォーム履歴報告書は各室の原状回復の記録や履歴が把握でき、大規模修繕などの長期計画にも参考になる資料です。
エレベーター、消防設備、特定建築物定期報告など、法定の報告義務があるものについては、確認の意味もあり引き継ぐべき書類です。しかし保存義務はありませんので書類がない可能性もあります。
しかし最低限、検査・報告の実施状況の確認ができるように準備することは必要でしょう。
家賃管理関係の書類として次のような書類があります。
家賃収支報告書は管理会社が必ず作成するものであり、新規の管理会社にとってもこれまでの履歴を確認できる重要な書類です。
滞納履歴管理表は作成しないケースが多いと思いますが、メモ程度の記録や家賃保証債務履行の記録があると、管理業務のうえで役立つ場合もあります。
また家賃収支報告書は預金口座残高との照合が必要であり、書類のみの確認は避けなければなりません。
管理会社の変更は次のような流れで進めます。
基本的な流れとしては、すべての準備や手続きが完了した時点で入居者への連絡となります。詳細は以下で説明します。
管理会社を変更するにあたっては、まず変更の準備をします。
具体的には新しく委託しようとしている管理会社と、業務内容や契約条項について協議をし、管理費を決定する必要があります。
新管理会社は管理物件の詳細を把握していないケースもあるので、物件の内容や入居者に関する情報などを周知させ、管理移行時に支障がないように準備が必要です。
業務内容についても、今後は管理会社の変更をする必要がないよう、十分に確認し業務委託契約書に反映させることが重要でしょう。
業務内容や契約条項の詳細が明確になったら「業務委託契約」を締結します。
賃貸管理契約は国土交通省が公表している「賃貸住宅標準管理委託契約書」に基づき行うことが望ましいのですが、賃貸物件や業務内容に該当しない部分がある場合は、後にトラブルが生じないよう時間をかけて検討する必要があるでしょう。
また管理業務移管のタイミングについては、現在の管理会社との契約解除のタイミングと合わせる必要があり、現在の管理会社との協議も行わなければなりません。
現在の管理会社との契約解除については、現在の業務委託契約書に定めがあるため、その定めに則り協議と契約解除を進めていきます。
一般に解約は3カ月前に文書で申し入れすることが多いですが、業務の引き継ぎなどが円滑に行われるよう留意して契約解除を進めます。
家賃保証会社を利用している場合、管理会社が変更になっても保証委託契約そのものは有効です。
ただし家賃の立替え払いの振込先が管理会社になっているケースもあるため、保証会社へは管理移行の前に連絡することが望ましいでしょう。
入居者へは管理会社が変更になる、少なくとも1カ月前には、文書で管理会社変更の知らせを行うことが重要です。
家賃の振込、建物の不具合の連絡、クレーム、その他相談事項など、入居者にとっては大家さん以上に、コミュニケーションの機会が多いのが管理会社です。快適な生活環境を提供するうえで、管理会社の役割は大きなものです。
入居者が管理会社変更に伴う支障のないようにすることが大切です。
管理会社を変えるためには新しい管理会社を選ばなければなりません。管理会社を変更する理由を考えた場合、その選択はより慎重である必要があります。
また賃貸管理業務は委託業務であり、事前に業務能力を把握することは難しく、事後に選択が正しかったのか誤っていたのかが判断できるものです。
そのように難しい管理会社の変更や選択にあたって、管理会社を判断するポイントやヒントを紹介します。
管理会社を変更する理由として多いと考えられるのが、空室対策が満足にできず入居率の改善が見られないことです。
空室対策にもいろいろな方法があり、大規模なリフォームなどはオーナー負担もあり、管理会社だけで進めることはできません。しかし大きな負担を必要としない空室対策もあり、そのような提案をオーナーにまったくしない管理会社もあります。
あるいは空室対策としてさまざまなアイデアを提案し、その都度実践するがなかなか成果がでないこともあります。
このような状態がつづくとオーナーとしては、管理会社の変更を検討するようになり、ほかの管理会社からの提案に関心を持つ場合があります。
空室で悩むオーナーの実状を知ったほかの管理会社は管理移行のチャンスと捉え、オーナーの関心を惹きつけようとさまざまな方法で営業攻勢を強めるものです。
オーナーとしては管理会社から提案される空室対策が、本当に実効性のあるものか入念に検討する必要があり、管理業務の遂行力が本当に備わっているのかを見極めることが重要といえるでしょう。
賃貸管理業務は適切に実施されるのがあたり前であり、業務上で生じるミスなどはあってはなりません。しかし管理業務は人間が絡むため、ヒューマンエラーを防ぐことは難しいものです。
そのようなとき、小さなミスが大きなトラブルに発展する前に、誠意をもって相手方に対応しなければなりません。
たとえば仲介会社の担当者への連絡ミスや、修繕依頼のあった入居者への連絡ミスなど、小さなミスであっても管理会社の信頼性が失われると賃貸物件そのものの信頼性に影響を与えます。
仮に変更を検討している管理会社から提案された空室対策が評価できるものであっても、実行する担当者に信頼がない場合は「絵にかいた餅」で終わることもあります。
賃貸管理業務は、入居者、クリーニング業者、内装業者などとの人間関係が円滑でなければ難しいものがあります。
現代はデジタル社会といわれますが、賃貸管理は対人能力が必要な業務であることを認識する必要があるでしょう。
管理会社の変更は実際に行ってからでなければ、変更が正しい判断であったかどうかわからないものです。
管理会社を変更して失敗に気付き、再び管理会社を変更しまた失敗をする、このようなことを繰り返すよりも確実な管理会社の変更方法があります。
それは「サブリース」です。管理会社の変更理由の多くは空室対策がうまくいかないことが原因です。サブリースは家賃保証であるため、オーナーは空室に関する悩みがありません。
空室対策になりなおかつ確実な管理業務を期待できるのが「サブリース」の大きなメリットです。管理会社の変更を検討されている場合には、サブリースを検討するのも賢い選択肢となるでしょう。
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