賃貸管理コラム
カテゴリー: アパート・マンション経営
アパート経営を始める際は、資格を取得するべきか悩む方も多いでしょう。
アパート経営の知識があるのとないのとでは、計画の時点から大きな差が出ます。経営の経験は時間をかけて積み重ねるしかないとしても、知識は努力しだいで得られますので、資格を取っておく価値は十分にあるといえます。
本記事では、アパートのオーナーにおすすめの資格を難易度やおすすめ度と併せて紹介します。最低限の知識を身につけて、円滑な経営を目指しましょう。
アパート経営は資格がなくても始められますが、取得するメリットがあります。
アパート経営には、開業試験も資格もありません。アパートを調達する資金さえ用意できれば、誰でも始められます。しかし、無計画に始めても経営を成功させるのは難しいでしょう。
入居者と賃貸借契約を結び、生活空間を提供するオーナーの責任は、多くの人が考えるよりも重いものです。
経営者としての自覚を持ち、入居者とのトラブルに対処するには、前提となる知識が大切です。アパート経営に関連する資格の勉強をして必要な知識を身につけて、その延長で資格を取得できればベストでしょう。
つまり、目標はあくまでもアパート経営の健全化と収益化です。資格取得を目的に勉強しても、単なるお飾りになっては意味がありません。
アパート経営では、以下のようなさまざまな業務があり、必然的に覚えることがとても多いです。
これらを行う過程で、金融機関や不動産会社、施工会社、管理会社など、さまざまな会社と関わり契約を結びます。ところがオーナーに知識がないと、必ずしも公平な契約条件になっているとは限りません。
資格があるからといって、有利に契約できるわけではありません。しかし少なくともだまされてしまうリスクは避けられます。さらに有資格の「しっかりしたオーナー」をアピールできると、対外的な強みになって入居者の安心にもつながるはずです。
アパート経営に特別な資格や必須の知識はありませんが、借地借家法という法律については理解しておくとよいでしょう。
借地借家法は、借主である入居者を保護する性質の強い法律のため、貸主であるオーナーにとっては不利に作用することがあります。また、アパートの賃貸借契約では、借地借家法が民法より優先されます。
借地借家法をしっかりと理解しておくと、借主と貸主の権利や契約の有効性などを判断しやすいです。入居者との契約トラブルに対して、法的な根拠による主張ができるようになります。
アパート経営のオーナーにおすすめの資格を5つ紹介します。
資格名 | 合格率 | おすすめ度 |
---|---|---|
賃貸不動産経営管理士 | 31.5%(令和3年) | ☆☆☆☆☆ |
不動産実務検定2級 | 64%(令和3年) | ☆☆☆☆ |
住宅診断士 | 24%(令和3年) | ☆☆☆ |
宅地建物取引士 | 15.6%(令和3年12月) | ☆☆☆ |
FP3級 | 学科83.37%、実技90.33%(令和3年5月) | ☆☆☆ |
参考
賃貸不動産経営管理士は、賃貸物件の管理における専門資格で、2021年4月には国家資格になりました。
経営や設備管理だけではなく、法律や税金まで幅広い知識を必要とされ、管理会社のみならずオーナーにとっても取得しておきたい資格として注目されています。
範囲が広いこともあり、合格率が約30%とハードルは少し高めです。しかし、賃貸不動産経営管理士講習を修了すると、試験の一部(50問中5問)が免除されます。
旧名称が「大家検定」であることからもわかるように、不動産実務検定は賃貸物件のオーナー向けの民間資格です。難易度別に2級・1級・マスターとありますが、基礎知識や運営ノウハウを対象とする2級をおすすめします。
資格に対する認知度では国家資格に劣りますが、アパート経営の実務的な知識を身につけるには最適な資格です。CBT試験(パソコンで受験する試験)で行われることや、都合のよい日に受験できることなど、その手軽さもメリットが大きいです。
アパートの運用において、大きな費用を伴う修繕のスケジュールはとても重要です。住宅診断士(ホームインスペクター)は、いってみれば「住宅のお医者さん」です。取得すれば、住宅の劣化状況を把握し、適切な修繕計画を立てられるようになります。
民間資格ではありますが、不動産取引でホームインスペクションの需要は高まっています。持っておくと役に立つ資格であることは間違いないでしょう。
民間資格としては合格率が低いのも、それだけ専門性が高いことの表れです。
アパートの入居者を募集するときは、不動産会社へ仲介を依頼するケースがほとんどです。宅地建物取引士は不動産会社の従業員が目標とする資格で、賃貸借や売買における契約の安全性と公平性を保つ役割があります。
毎年25万人もの受験者がいる人気の国家資格で、合格率は約15%と低いです。それでも、不動産の法律全般の知識が身につけられる宅地建物取引士は、オーナーであれば取得を目指すだけでも損はないといえるでしょう。
ファイナンシャルプランナーは、資金計画や金融商品・保険商品の選び方など、生活とお金についての専門家です。試験科目には、不動産や相続まで含まれる国家資格です(民間資格もあります)。
アパート経営に直結する資格ではありませんが、資金調達から出口戦略までの中長期において、資産運用の知識が役に立ちます。ファイナンシャルプランナーには1級から3級まであり、3級は実務経験がなくても受けられます。
資格の取得より前に、アパート経営の初心者が知っておくべきことなどを紹介します。
アパート経営のリスクは、家賃収入に関係するものだけで以下のようなリスクがあります。
それ以外にも、以下のように想定しなければならないリスクは多いです。
資格があっても完全に回避できるものではありませんが、資格を取得するときの勉強が役に立つでしょう。
リスク管理は、オーナーとして細心の注意が必要なポイントです。リスクをおそれて費用を過剰に投入すると収益性は下がり、リスクを軽視すると収益が安定しません。アパート経営では、リスク管理と収益性のバランスが重要です。
また、アパート経営のすべを自分で対処するのはあまりにも負担が大きいでしょう。成功しているアパート経営者は、外部委託で負担を減らしながら、徐々に所有物件を増やして収益を上げているケースが見られます。
アパート経営の初心者や副業としてアパート経営を行う人は、外部委託でリスクや負担を減らしながら安定収益を目指す、サブリースの活用がおすすめです。最初から収益の最大化を狙ってもなかなかうまくいきません。
外部委託には、主に以下の2種類があります。
それぞれの違いは以下のとおりです。
管理委託 | サブリース | |
---|---|---|
空室リスク | 対応できない | 空室保証がある |
家賃滞納 | 管理会社またはオーナーが対応 | サブリース会社が対応 |
手数料 | 家賃の約5% | 家賃の約10〜20% |
礼金・更新手数料 | オーナーの収入 | サブリース会社の収入 |
入居者トラブル | 管理会社が対応 | サブリース会社が対応 |
自分でアパート経営をしながら一部の事務負担を任せるのが管理委託です。一方、アパート経営そのものをサブリース会社に任せて、確定賃料を得るのがサブリースだといえるでしょう。
サブリースの手数料が管理委託よりも高くなる理由は、管理委託にはない空室保証があるからです。家賃収入がゼロになってしまうことは、アパート経営で一番大きな損失です。空室リスクが回避できるかわりに、手数料が高くなるのはしかたがないといえます。
まずは信頼できるサブリース会社に相談してみて、自分に合った方法かを検討してみましょう。
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