賃貸管理コラム

親のマンションを相続するか悩んだら。判断基準や手続き、相続後の活用について

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親の遺産にマンションがあると、管理や手続きなどに手間がかかるため、相続するか悩む人も多いでしょう。物件の資産価値やほかの遺産を確認して、慎重に判断する必要があります。

ここでは、親のマンションを相続するかしないかの判断基準、さらに必要な手続きや費用を詳しく解説します。また、相続したマンションにどういった活用方法があるのかも紹介するので、選択肢の幅を広げて検討してみましょう。

親のマンションを相続するか悩んだら

親が所有しているマンションを相続するかしないかの判断を迫られたときに、どのような検討を行い評価すべきか、ここでは基本的な考え方を整理してみます。

マンションの資産価値を確認する

相続するかそれとも相続放棄するかの判断は、まずマンションの資産価値を確認するところからスタートです。

価値のある資産とは「売れる資産」であり「相場並みかそれ以上」で売れるものと捉えてよいでしょう。相場以下やほとんど売れる見込みのない資産は価値が低く、相続するかどうかを慎重に判断する必要があります。

現状では資産価値の少ないマンションであっても、立地条件次第ではリフォームやリノベーションによって活用できる可能性があります。素人判断ではなく、専門家の意見なども参考にマンションの資産価値を確認しましょう。

ほかの遺産を確認する

相続する資産の中には、負債もあります。もし借金や返済義務のある負債がある場合、資産を売却しても負債が残るようであれば、相続放棄を検討しなければなりません。

現金や預金も含めた総資産と負債との差額を正確に把握し、相続するとマイナスになる場合は、相続放棄の選択がより有力になるでしょう。

また、負債はなくとも維持管理に費用がかかり、結果的に費用負担が資産価値を上回るケースもあります。いわゆる「負動産」といわれる費用のかかる不動産は、相続すべきか慎重に判断しましょう。

相続放棄は慎重に判断する

相続する財産を確認した結果、負債が多く相続すると負担が重くなる場合は相続放棄が可能です。

ただし相続放棄はすべての財産の放棄であり、特定の財産のみを相続し、ほかは放棄するなどの選別は基本的にできません。財産の中にどうしても手に入れたい特別なものがある場合は限定承認するなど、慎重に検討する必要があります。限定承認は、すべての財産を放棄する相続放棄に対して、プラスの財産の範囲内でのみ負債などを相続することです。

また、相続放棄した場合でも、不動産の管理責任は相続人にあります。相続人は、空き家や空き地の管理をする義務があります。

現状では、マンションを相続放棄したとしても、管理者としての責任を免れることはできず、管理費や修繕積立金などの費用負担をすることになります。

ただし、2023年施行予定の改正民法では「相続時点で相続財産を占有している場合に限り管理責任が生じる」ことになるため、占有していない場合は費用負担がなくなります。

また、相続放棄は「相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内」という期限がありますので、注意しましょう。

親のマンションを相続するときに必要な手続きや費用

相続するときあるいは相続放棄するとき、いずれにしても所定の手続きが必要です。それぞれ手続きの期限や必要な費用があるため、注意しましょう。

相続手続きの手順

相続は、次の手順で進めていきます。

相続手続きの手順
相続の手続き 期限
遺言書の確認 約1カ月以内が目安
相続人の確定
遺産分割協議開始
相続放棄または限定承認の申述 相続開始があったことを知ったときから3カ月以内
相続税の申告 被相続人が死亡した翌日から10カ月以内
不動産の相続登記 相続開始かつ所有権の取得をしたことを知った日から3年以内(2024年4月1日法改正から)

相続税の申告が10カ月以内と決まっているため、被相続人が亡くなったら、できるだけ早く相続人を確定させる必要があります。

相続税の納税義務は、相続により財産を取得した人にあります。しかし、遺産分割協議が進まず、誰がいくら相続していくら課税されるか決められないケースもあります。この場合は、暫定的に民法の規定にしたがった分割割合か、遺言書に基づく包括遺贈により相続税を計算して申告します。

ただし、相続税を軽減できる特例が適用できなくなるため、できるだけ申告期限までに遺産分割協議をして相続人を決めるのが望ましいです。

相続人が複数いる場合

相続人が複数いる場合は、遺言書に基づくか、遺産分割協議により財産を分割します。

ただし遺言書の内容が、各相続人が最低限取得できる財産である遺留分を侵害していることがあります。たとえば、特定の相続人にすべての遺産を引き継ぐ、といった内容です。遺言書の内容に加えて、遺留分を考慮した分割協議が必要です。

遺産分割協議では、法定相続分がベースになります。そのため、配偶者と子が相続人の場合は配偶者が財産の2分の1を、子が残り2分の1を相続して(子が2人の場合は各4分の1)、均等に分割するのが基本です。

配偶者がおらず複数の子が相続する場合は、財産を子の人数で均等に分割します。また、遺留分は法定相続分の2分の1になります。

また、遺産の中でもマンションなどの不動産は均等に分けることが難しく、トラブルになりやすいので注意しましょう。マンションの分割方法は、以下のような方法があります。

換価分割
マンションを売って、その売却代金を相続人全員で分ける
代償分割
マンションを相続した特定の相続人が、その対価をほかの相続人に支払う

また、相続人全員の共有名義でマンションを相続することも可能ですが、おすすめはしません。相続後に売却や活用をするときに全員の同意が必要なため、手続きが複雑になったりトラブルに発展したりします。

相続放棄をする場合

相続放棄の手続きは、相続開始があったことを知ったときから3カ月以内に行う必要があります。下記の書類を準備して、家庭裁判所に申述します。

  • 相続放棄申述書
  • 被相続人(亡くなった親)の住民票除票か戸籍附票
  • 被相続人(亡くなった親)の除籍謄本か改製原戸籍
  • 相続放棄する人の戸籍謄本

必要書類を裁判所に提出すると、約1週間で相続放棄が受理されます。

相続に関する費用

マンションを含む遺産の相続時は、以下のような費用がかかります。

  • 相続登記費用
  • 相続放棄するときの申述費用

相続登記にかかる登録免許税は、マンションの評価額に基づいて計算され、固定資産税評価額の0.4%です。登記申請を司法書士に依頼した場合は、報酬として約3万円の費用がかかります。

相続放棄は、家庭裁判所に提出する申述書に貼付する印紙代や郵便切手のほか、住民票除票などの添付書類を取得する費用と合わせて数千円の費用です。司法書士や弁護士に依頼する場合は、3万~5万円の報酬を支払います。

相続した親のマンションを活用する

マンションの模型を両手に載せた人

親のマンションを相続したあとにどのような活用方法があるのか、代表的な3つのパターンについて紹介します。

自分で住む

まず考えられるのが、自分で住むことです。もし現在の家から引っ越して、マンションに住みたいと考えているならよい機会になります。

相続登記を行ったら、マンション管理組合に区分所有者の変更届などを提出します。マンションはほかの区分所有者と協力しながら、共用部の維持管理や共同生活のルールを確立し遵守しなければなりません。

管理組合の一員として活動に積極的に参加し、適正なマンション管理が行われるよう自ら関わることが、マンションの資産価値を維持し高めることにつながります。

売却する

相続したマンションを売却することも選択肢です。

売却するには、住宅ローンなど負債の有無が重要です。住宅ローンの残債がある場合は、売却代金で一括返済できるかがポイントです。

またマンション売却によって譲渡所得が生じる場合は、譲渡所得税が課税されるので、収支計算をあらかじめ確認する必要があります。

譲渡所得は以下の式で計算できます。

譲渡所得=売却により得る収入-親がマンションを取得したときの取得費(建物分は減価償却分を差し引いた残価)-譲渡に必要な費用

売却前にシミュレーションすると、譲渡所得税が課税されるかどうかある程度わかります。

また、売却する前に、自分で住む場合と同様に、管理組合に区分所有者変更の手続きを行う必要があります。

賃貸に出す

親から相続したマンションを賃貸に出して、収益化するのも選択肢のひとつです。

自分で住む場合は、所在地や立地条件など自身に適していなければ住むことができません。また売却してしまえば、売却代金は得られますが、手元に資産は残りません。

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マンションは、管理費や修繕積立金が住んでいなくてもかかります。つまり毎月のランニングコストが必ずかかるものです。家賃収入があれば、これらの毎月のコストおよび固定資産税の負担分を賄って、毎月の定期的な副収入が得られる可能性があります。

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