賃貸管理コラム

サブリースの仕組みを徹底解説。委託管理との違いやリスク、新法も紹介

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アパートやマンションなどの賃貸経営に取り組んでいれば、一度は「サブリース」や「30年一括借り上げ」などの提案を、不動産会社から受けたことがあるのではないでしょうか。

サブリース契約は、「手間がかからない」「毎月変わらない家賃を受け取れる」ことが魅力です。しかし、注意すべき点も多く、きちんと見極めなければ、物件の収益を下げる結果になりねません。

今回は、「30年一括借り上げ」に代表されるサブリース契約の仕組みについて、メリットやデメリットを紹介します。

また、2020年に施行されたばかりのサブリース新法についても説明します。

サブリースの仕組み

サブリースは、最低保証賃料があるため、家賃保証と同義と認識している人も多いのではないでしょうか。サブリースの仕組みを、家賃保証と比較しながら確認してみましょう。

サブリースとは

サブリースとは、不動産会社が大家からマンションなどの集合住居を借り受け、入居者に転貸する契約形態のことです。

物件の所有者たる大家は入居者との契約を行わず、借り上げた不動産会社が契約先となります。契約時に満室時の賃料のシミュレーションを行い、その80~90%が最低保証賃料として毎月支払われます。

「30年一括借り上げ」はサブリース契約でよくある条件設定です。

新築すると同時に30年間一括でそのマンションすべてを不動産会社が借り受け、その後の入居者への客付けや賃貸借契約、管理は不動産会社ですべて行うという条件です。

それに対し、一般的なマンションなどの賃貸借契約では、マンション大家が賃貸人、入居者が賃借人です。不動産会社はその仲介役として、仲介手数料を受け取ります。

さらに、マンションの管理を不動産会社に委託している場合は、以下のような流れで大家に家賃が支払われます。

  1. 不動産会社が賃借人から家賃を徴収
  2. 家賃から委託手数料として5%ほどを差し引く
  3. 残りをマンション大家の口座へ振り込む

空室リスクや賃借人の家賃滞納が発生した場合のリスクは大家負担ですが、大家の取り分が多い傾向があります。

サブリースと家賃保証の違い

サブリースでは最低保証賃料が定められています。

一方、一般的な賃貸借契約を入居者との間で直接締結する場合でも、家賃滞納リスクを低減させるためのサービスとして、家賃保証があります。

それぞれの違いを確認してみましょう。

サブリースと家賃保証の比較表
サブリース(一括借り上げ) 家賃保証サービス(滞納保証)
内容 不動産会社が物件の一括借り上げをして、それを入居者に転貸する契約形態。 家賃の80%~90%程度の金額が不動産会社から振り込まれる。 入居者が家賃を滞納した場合、保証会社が立替払いをしてくれるサービス。入居者と保証会社が保証契約を締結し、保証料は入居者が払う。
サービスの契約 大家と不動産会社 入居者と保証会社
賃貸借契約 大家と不動産会社 大家と入居者
メリット
  • 家賃滞納や空室のリスクに関係なく、一定額の家賃収入がある
  • 不動産会社に個別の入居者への対応を任せることができる
  • 保証料は入居者が払うので、大家の負担はない
  • サブリースと異なり家賃は100%大家へ入る
  • 保証会社による入居者への事前審査があり安心
デメリット
  • 家賃滞納や空室リスクに備える分、大家の取り分が減るため、収益性が下がる
  • 契約期間があり、更新時に家賃の値下げ交渉をされる可能性がある
  • 保証契約は入居者にひもづくため、空室時の家賃低下リスクは保証されない
  • 契約時に入居者に金銭的な負担がかかるため、ほかの物件を選ばれる可能性がある

サブリースのメリット

サブリース契約のメリットは、手間がかからず最低保証の賃料を受け取ることができる点です。

一般的な賃貸借契約では、賃借人が変わる度に契約手続きが発生します。

しかし、サブリース契約では、不動産会社とひとつの契約を締結するだけで済みます。日常の管理も不動産会社へ任せることができ、大家側の手間を最小限に抑えることができます。

また、空室や家賃滞納リスクを気にすることなく、最低保証の賃料を受け取ることができるため、契約期間内の収入の見通しが立てやすいというメリットがあります。

サブリース新法で何が変わったのか

メリットがあるサブリース契約ですが、悪徳業者による被害が発生しているのも事実です。

国土交通省による「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査結果」(2019年)では、サブリースに関するトラブルのうち、3割が、「業者から契約期間中に大幅な家賃減額等の予期せぬ条件変更を求められた」という結果になっています。

家賃保証をうたい文句に収益化の見込めない土地に建物を建てさせ、数年後にさまざまな理由をつけて契約解除されるという被害もあります。

それらを受けて、サブリース契約に関する法改正がされました。

2020年に成立した「賃貸住宅の管理業務等の適正間に関する法律」(通称サブリース新法)では、これまでサブリース契約で問題に発展しやすかった説明責任を明確に定めました。

内容は、以下のとおりです。

①誇大広告の禁止

以下のような内容について、実際よりも著しく優良であるなど、著しく事実に相違する表示をして誤認させる広告を禁止しています。

  • サブリース業者が支払うべき家賃
  • 賃貸物件のメンテナンスの実施方法
  • 特定賃貸借契約(サブリース)の解除に関する事項

②不当な勧誘行為の禁止

サブリース契約締結時において、判断に影響を及ぼす重要な事柄に関し、以下を禁止しています。

  • 事実と異なることを告げること
  • 故意に事実を告げずに勧誘をすること

③契約締結前の重要事項説明

判断に影響を及ぼす重要事項として、以下の内容は書面などを交付して説明しなければならないとしています。

  • サブリース契約の対象となる賃貸住宅
  • サブリース契約の相手方に支払う家賃その他賃貸の条件に関する事項
  • サブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全の実施方法
  • サブリース契約期間に関する事項
  • 転借人の資格その他の転貸の条件に関する事項
  • サブリース契約の更新または解除に関する定めがある時は、その事項

サブリースを依頼する会社選びのポイント

スーツを着た女性

サブリース新法の制定により、今後サブリース契約を安心して締結できる土台が整いました。サブリース契約は手間がかからないため、不動産投資に不慣れな大家には特にメリットがあります。

どういった会社を選べばよいのか、会社選びのポイントを2点ご紹介します。

企業をしっかり確認

サブリース契約は長期間に及ぶため、その間ご自身の物件を任せられるパートナー選びは大切です。そのため、契約する企業はしっかり見極めましょう。

不動産会社が倒産した場合、家賃が振り込まれないなどのリスクがあります。30年以降も存続していそうな会社かどうか、企業の経営状況を確認しましょう。

また、コンプライアンス遵守の仕組みもしっかりしているかどうかも着目しましょう。

契約書をしっかり確認

サブリース契約でトラブルとなる原因で圧倒的に多いのは、契約書をしっかり確認しなかったことです。契約内容は、細かい部分までしっかり確認しましょう。

特に確認しておかなければならない項目は、以下の3つです。

契約期間と家賃改定

「最長30年長期保証」といったうたい文句でも、契約書を見ると実際は2~5年の契約期間で、更新時に賃料の改定をする可能性があることが記載されていることがほとんどです。

ずっと同じ賃料をもらえると思い込んでいたのに、物件の老朽化に伴い賃料改定されてしまい、思うような収入が得られなかったというケースが発生します。

提示された保証賃料がいつまで継続するのか、必ず確認しましょう。

敷金・礼金・更新料の取り分

一般的な賃貸契約では、入居者からの礼金・更新料などの収入は大家の取り分です。しかし、サブリース契約では不動産会社の取り分となる契約内容が多くあります。

不動産会社としては、空室リスクに備える保証として収受しています。

契約時にどちらの取り分かは、必ず確認しましょう。

修繕費の負担

マンションやアパートには大規模修繕が発生します。分譲マンションであれば、入居者から修繕積立金を集め、そこから拠出します。しかし、賃貸マンションの場合は、大家がそれまでに得た賃料収入から修繕費用を出さなければなりません。

サブリース契約においても、修繕費用は不動産会社ではなく大家負担が一般的です。

以下の2点は、事前に必ず確認しましょう。

  • 修繕費が大家負担なのかどうか
  • 修繕する場合の費用の妥当性

サブリースも一般的な管理委託も、入居者とのやり取りを不動産会社がやってくれることに変わりはありません。

大家自身がよく学び、不動産会社を判断することが重要です。


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