賃貸管理コラム

エレベーターの点検は法律で義務化されているのか

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エレベーターの法定点検は、安全性と性能を維持するために法律で義務付けられています。法定点検の検査・報告が行われていないと、100万円以下の罰金に処されます。

エレベーターの法定点検が求められる理由や、保守点検との違いなどを解説します。

エレベーターの法定点検とは


エレベーターの法定点検とは、建築基準法に基づいて年に1回行われる点検で、エレベーターの安全性と性能を維持するために義務付けられています。

法定点検の検査・報告が行われていないと、100万円以下の罰金に処されます。ここでは、法定点検が求められる理由や義務にならないケース、法定点検の項目について詳しくみていきましょう。

法定点検が求められる理由


エレベーターの法定点検が求められる理由としては、常時安全に利用するためであり、かつエレベーターの性能を長く保つためです。定期的に点検を実施することで人身事故や突然の故障といったトラブルの発生を未然に防げます。

また、エレベーターは時が経つにつれ異音がしたり、揺れが発生したりと乗り心地が悪化する可能性があります。性能の低下に対し、点検で運行状態の確認や部品の清掃などを施すことで、長い期間、安全かつ快適な性能を保てる可能性が高くなります。

義務にならないケース


法定点検が義務にならない(定期検査報告が不要)ケースとして、個人宅で設置されているホームエレベーターや、積載量1トン以上の大型貨物用エレベーターで労働基準監督署長または厚生労働大臣が指定する機関の性能検査を実施している場合、などが該当します。

法定点検の項目


エレベーターの法定点検は、機械室・昇降路内・かご室・着床装置が該当し、それぞれの動作や状態を確認します。各箇所の点検項目は下記の通りです。
機械室の検査 巻上機 モーター、ブレーキ、ギアの状態確認
制御装置 制御盤の動作確認
配電装置 配線、絶縁状態の確認
安全装置 調速機、緊急停止装置などの動作確認
機械室 機械室内の空調、照明装置の確認
昇降路内の検査 レール・ガイドシューなどの状態確認、昇降路内の空調、照明装置の確認
かご室の検査 かご室内の構造や内装材の状態、ドアの開閉装置などの動作、照明装置、操作ボタン、表示灯の状態確認
着床装置 各階の停止位置や段差、ドアの位置や開閉速度を確認

ほかにもワイヤーロープの摩耗や破損、カウンターウェイトの重量や状態、緩衝材の状態などの確認を行います。法定点検は、「昇降機等検査員」という国家資格を保有したスタッフが目視や計測器による測定によって検査を実施します。

エレベーター点検を毎月行う必要がある?


エレベーターの点検には、法定点検と保守点検の2種類あります。法定点検は年に1回実施が義務付けられていますが、保守点検はおおむね1カ月に1度の頻度で行うことが推奨されています。ここでは、法定点検と保守点検の違いや怠った際のリスク、会社選びの重要性について詳しくみていきましょう。

法定点検と保守点検の違い


エレベーターの法定点検と保守点検は、頻度や対象、検査員の資格などさまざまな面で異なります。法定点検は、一級または二級建築士や昇降機等検査員の資格を保有している専門家が点検を実施し、特定行政庁へ定期検査報告が義務付けられています。

一方、保守点検は保守点検契約に基づき、エレベーターの使用頻度等に応じて保守・点検を点検事業者が実施し、定期検査等の報告義務はありません。

ただし、点検の記録は3年以上保管が必要です。保守点検は全てのエレベーターが対象で、点検箇所は運行状況の確認、各種調整や注油、摩耗や劣化した部品の交換など法定点検に比べると点検項目は限られています。しかし、1カ月に1回程度実施することで、エレベーターの不具合や故障にすぐ対応できます。

毎月の点検を怠った場合のリスク


毎月の点検を怠った場合、罰則はありませんが不具合や破損が生じている状態に気付かず、エレベーターが故障して長期間にわたり運用できなかったり、修繕費が高額になったりする可能性があります。また、最悪の場合、人身事故の発生につながりかねません。

そもそも毎月行われる保守点検は、エレベーターの安全性や性能の維持に重要な役割を果たしています。点検の頻度については法定点検と異なり、回数が定められていませんが、1カ月に1度程度の点検実施が義務付けられています。

よって、エレベーターを安全に運行するためには、毎月の点検が確実に行われることが重要です。

法定点検や保守点検は依頼する会社選びも重要


エレベーターの法定点検や保守点検は、建物の管理者や住民が行うものではなく、専門技術者がいる事業者に委託して定期的に実施するのが一般的です。

エレベーターの点検を依頼する際には会社選びが重要です。専門の技術者が定期的かつ適切に点検を実施することでエレベーターの安全性や性能の維持が保たれます。エレベーターの性能は点検が実施されないと短期間で低下してしまいます。

エレベーターの保守点検会社の選び方


エレベーターの保守点検会社を選ぶ際には、価格だけで比較するのではなく、業務の遂行能力やこれまでの点検実績、エレベーターを安全に運行するための体制が整っているかなど情報を収集して比較したのち、信頼関係が築ける保守点検事業者を選択しましょう。

具体的には、下記のような点について確認するとよいでしょう。

  • 「昇降機検査資格者」や「建築設備士」といった資格保有者が何名在籍しているか
  • 緊急時に即座に対応してもらえる体制なのか、交換部品の在庫がある状態なのか
  • 点検にかかる費用体系が明確で分かりやすいものか、緊急で対応が必要になった際には出張費などどのくらいの費用になるのか
  • 保守点検契約によって保証期間や保証内容などはどのようになっているのか

これらの内容を会社選びの段階で確認して、複数社の内容を比較することで信頼できる保守点検会社と契約できるでしょう。

信頼できる会社選びのコツ


エレベーターの法定点検や保守点検を依頼する会社を選ぶ上で、信頼できる保守点検会社を選ぶためには、いくつかコツがあります。まず、複数社から見積もりをもらいましょう。

同様の点検内容でも費用に大きな開きがあるケースや、費用が同額にも関われず保証される内容やサービスに差があるケースもあります。料金やサービス内容をよく比較して検討しましょう。次に、保守点検を利用している方の口コミや評判を参考にしましょう。

実際に利用している方がどのような点にメリット・デメリットを感じているのかをみておくことで、より信頼できる事業者と付き合える可能性があります。そして、保守点検におけるアフターフォローの内容を確認しましょう。

定期的にエレベーターの状態を報告してもらったり、よりよくエレベーターが使用できるための提案をしてくれたりすることで、設置した時の同様の性能を長く保てます。最後に、契約内容をよく確認しましょう。

契約内容を確認した上で不明点については都度確認します。その際に担当者から丁寧に対応してもらえると、安心して保守点検を依頼できるでしょう。


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