不動産投資を行う際、不動産会社からおすすめされる運用形態の一種が「30年一括借り上げ(サブリース)」です。30年家賃を保証してくれるということで、安定した不動産収入が期待できるなどのメリットがある一方、会社を選び間違えるとトラブルに発展するリスクもあります。
30年一括借り上げの概要やメリット・デメリット、サブリース契約をする際にチェックしておくべき内容、信頼できるサブリース会社を見極めるポイントを解説します。
30年一括借り上げとは?
30年一括借り上げとは、所有する賃貸物件を不動産の管理会社に30年間貸し出すことです。
一般的な賃貸経営では物件のオーナーが入居者と直接賃貸借契約を結び、自ら入居者管理や物件管理を行うか、管理会社に委託します。一方で30年一括借り上げ(サブリース)の場合、賃貸物件を借り上げたサブリース会社が入居者と賃貸借契約を結び、入居者の募集や契約、集金、物件管理などの業務をすべて請け負ってくれるため、オーナーは管理業務を行う必要がありません。
オーナーには事前にサブリース会社と取り決めた借り上げ賃料が毎月支払われるので、長期的に安定した収入が得られます。この際支払われる借り上げ賃料は、サブリース会社が得た家賃総額から手数料などを差し引いた額です。
30年一括借り上げ以外にも10年・20年のように期間が設定されているものもありますが、借り上げ期間にかかわらず、一括借り上げは総じて「サブリース」と呼ばれます。
30年一括借り上げをするメリット
30年一括借り上げをすると、賃貸物件のオーナーにはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは代表的な二つのメリットを紹介します。
安定した収入を確保できる
一つ目のメリットは、安定した収入を確保できることです。
30年一括借り上げをすると、空室があったとしても30年間は全室分の借り上げ賃料を毎月受け取れます。不動産経営において空室リスクは特に懸念すべきリスクですが、30年一括借り上げをすれば、空室リスクの回避が可能です。家賃滞納リスクに悩まされることもなく、30年間安定した収入が得られます。
面倒な管理業務の負担がない
二つ目のメリットは、面倒な管理業務の負担がないことです。
賃貸経営に管理業務は付きものですが、管理業務の煩わしさに頭を抱えるオーナーも少なくありません。代表的な管理業務には以下のようなものがあります。
- 入居者募集・審査
- 賃貸借契約の締結
- 家賃の集金・督促
- 契約更新
- 退去手続き
- 原状回復・クリーニング
- 定期清掃
- 法定点検
- 設備修繕
- 大規模修繕
前述したとおり一括借り上げの場合、上記のような管理業務はすべてサブリース会社が行います。そのため、オーナーは面倒な管理業務の負担なく、収入を得ることが可能です。
一括借り上げの場合、入居者とのトラブルなどもサブリース会社が対応してくれるので、精神的な負担も軽減できるでしょう。
30年一括借り上げのデメリット

管理業務の負担なしに安定した収入が長期的に得られる一方で、30年一括借り上げにはデメリットもあります。3つのデメリットを見ていきましょう。
賃料改定によって家賃が下がる可能性がある
30年一括借り上げのデメリットは、賃料改定によって家賃が下がる可能性があることです。
一括借り上げをする場合、一定期間ごとに賃料や契約内容の改定をサブリース会社と行います。空室率が高く、経年劣化が著しい物件の場合、改定によって家賃が下がる可能性が高いです。賃料の値下げに合意すると、当初見込んでいた家賃収入が減少してしまうので、家賃収入でローンの返済計画を立てた人にとっては大きなリスクとなってしまうでしょう。
また賃料改定に合意しない場合、一括借り上げの契約自体が解除になることもあります。
手数料がかかる
手数料がかかることも、30年一括借り上げのデメリットです。
一括借り上げをすると、サブリース会社に管理を委託するための手数料が発生します。手数料が発生する分、自身で管理する場合よりも収入は落ちてしまうでしょう。
一般の賃貸経営でも管理業務を外部に委託する場合は手数料が発生しますが、一般的に管理委託のみの場合よりも一括借り上げ(サブリース)のほうが高い手数料であるとされています。
サブリース会社の倒産リスクがある
サブリース会社の倒産リスクがあることも、30年一括借り上げのデメリットです。
サブリース会社が倒産した場合でも物件の所有権はオーナーにあるため、物件自体を失ってしまう心配はありません。サブリース会社が入居者と結んだ賃貸借契約も、一般的にはオーナーに引き継がれます。
しかし、適切な処理を行わずにサブリース会社が倒産してしまうと、入居者がサブリース会社に預けた敷金が回収できないといったトラブルに発展してしまうリスクがあります。またサブリース会社から入居者への説明がないまま倒産してしまうと、オーナーの元に多数の問い合わせが寄せられ、対応に追われる可能性もあるでしょう。
サブリース契約をする際にチェックしておくべき内容
サブリースの契約内容はサブリース会社によって異なるため、契約後に後悔しないためには内容をきちんと理解した上で契約を交わすことが大切です。ここでは、特に注意しておくべき2つのポイントを解説します。
家賃保証の条件
サブリース契約の家賃保証の条件は、必ずチェックしておきましょう。
空室があっても家賃保証が受けられるサブリース契約ですが、サブリース会社によって空室分に対する家賃保証の割合は変わってきます。また前述したとおり、30年一括借り上げで30年間家賃保証がある場合でも、契約時の家賃が維持されるわけではありません。賃料改定が行われるペースについても確認しておくことをおすすめします。
免責期間の設定
家賃保証の免責期間が設定されているかも、契約前に確認が必要です。
家賃保証の免責期間とは、サブリース会社が家賃保証を行う必要がない期間のことです。一般的に新築物件のサブリースの場合、入居者がそれほど見込めない募集から2カ月程度を免責期間としているケースは少なくありません。
しかし中には、入居者が退去する際にも免責期間を設ける契約になっているケースもあります。後々のトラブルを避けるためにも、免責期間の設定の有無や設定されているタイミングをチェックしておきましょう。
信頼できるサブリース会社を見極めるポイント
信頼できるサブリース会社を見極めるためには、以下のポイントをチェックしておくことが大切です。
大切な物件をしっかり管理してくれるサブリース会社なら、物件の資産価値ができる限り維持できるよう努めてくれます。また仲介力があれば物件に合わせた適切な入居者募集を行ってくれるので、入居率を高められるでしょう。
一括借り上げは空室リスクやオーナー都合での解約リスク、入居者トラブルのリスクなど、サブリース会社側にもさまざまなリスクがあります。リスクを未然に防ぐための対策やトラブルへの対応力をチェックすることも、信頼できるサブリース会社を見極めるポイントです。
30年一括借り上げを検討するなら上記のポイントを重視しながら複数のサブリース会社を比較し、信頼できる会社にサブリースを依頼しましょう。