賃貸管理コラム
サブリースとは、所有する物件をサブリース会社が借り受け、入居者に転貸する仕組みであり、メリットとしてうたわれる「家賃保証」は嘘ではないものの、注意が必要です。
サブリースや家賃保証の嘘とは何なのかや事例から学ぶサブリースでの失敗を防ぐ方法、サブリースのメリット・デメリットについて解説します。
結論からいえば、嘘ではありません。サブリースでの不動産投資で成功しているオーナーも多く、常に「サブリース=悪」の図式が成り立っているわけでもありません。
正しくは、「嘘ではないが、裏があるケースに注意が必要」です。
さらにいえば、あえて裏があることを説明しないサブリース会社も存在します。
営業担当者の甘言に誘われ十分な調査をせず契約すると、オーナーが経済的な危機に陥る恐れがあるのです。
サブリースの問題点については、NHKをはじめ、様々なメディアで取り上げられ、多くの人々が言葉巧みなセールスに騙された事実が明らかになりました。
そもそも不動産「投資」である以上、サブリースという仕組みが付与されていてもリスクは避けられないのです。
むしろサブリースの仕組みそのものにリスクがあると考えて、慎重に話を進めていく必要があります。
サブリース投資の失敗例によくあるケースは次のようなものです。
順に解説していきます。
たとえば、同じ「サブリース」という言葉で表現されていても、その内容は会社ごとにまちまちなケースが多いです。
家賃保証について「家賃収入の○○%」という表現をしている会社があったとします。
収入部分の○○%は保証されるから安心と思うかもしれません。しかし内容をよくよく吟味すると、入居者が支払う家賃は会社が設定することになっていたりします。
そうなると、たとえ○○%が保証されていたとしても、そもそもの家賃を低く設定された時点で収入は下がってしまいます。
結果、サブリースで運営していても、安定的に入ってくるはずであった収入に増減が発生するのです。
このようなケースはよくあり、しかもサブリース契約の内容は非常に複雑な場合が多いため、リスクを十分に説明されず、理解できないまま契約に至っているケースが多いでしょう。
「退去時の修理費用はサブリース会社が請け負う」という内容になっているにも関わらず、入退去の発生時にオーナーが費用請求される場合があります。
修理費をサブリース会社が負担するのは嘘ではないものの、「退去時の修理費」には何が含まれるのかしっかりと把握し、どこまでが会社負担でどこまでがオーナー負担なのかを認識しておく必要があります。
賃貸住宅での入退去にかかる費用については、国土交通省のガイドラインに基づき定めている会社が増えているのが現状です。
国交省のガイドラインによると、退去の折に入居者に修理費用として請求できるのは、明らかに入居者が故意もしくは過失により損壊させた部分についてのみであり、自然損耗部分の原状回復費用についてはオーナー負担となっています。
もっとも、契約の内容は会社によってまちまちです。中には、原状回復費用について良心的な内容になっている会社もあります。
退去時の修理費用は、入退去が発生するたびにかかる費用となってきます。どこまでがオーナー負担かを把握して契約に臨む必要があるのです。
高齢者がだまされやすい理由の一つは、「不動産投資による相続税対策」目的に、不動産投資を検討する人が多いからです。
土地や建物などの不動産資産のほか、預貯金や株式、保険などの有価証券を所有している高齢者は少なくありません。
不動産投資による相続税対策とは、賃貸物件の購入や建設により大きな負債を発生させることで、課税対象資産から負債分を相殺して相続税を軽減させるという方法のことです。資産を引き継ぐ家族の負担軽減を目的に不動産投資を行うため、「急いで対策しないと」と考える人が多いです。
結果、内容を把握する前にサブリース契約してしまうケースが後を絶たないのです。
「契約を解除できない」というのは嘘です。サブリース契約であったとしても契約の解除はできます。ただし簡単ではありません。
サブリースの契約書に「期間内解約」が記載されている場合、6カ月前に書面で解約通知するか、3カ月分~12カ月程度の賃料(違約金)を支払うことで即時解約できる場合が多いです。ここで、借主であるサブリース会社が解約を「拒絶」してトラブルになるケースが存在します。
サブリースは、サブリース会社とオーナーが賃貸借契約を結びます。賃貸借契約では、借地借家法で借主側(サブリース会社)が保護されるため、原則的にはオーナー都合による解約はできません。
契約書に解約に関する条項が書かれている場合もありますが、サブリース会社が借地借家法を根拠に解約を断るケースも存在します。契約書に解約条項が設けられていても、借地借家法が優先されるため、解約にはオーナーが物件を使用する必要が生じたなどの正当事由が求められます。
円滑に契約解除できたとしても、その後の不動産経営をどのように継続していくのかという問題が残ります。
その後の管理形態が充実しなかった場合には家賃収入の低下が起こり、返済や固定資産税の支払いが滞ることも考えられるのです。リスクも十分考慮したうえで契約解除を検討しましょう。
サブリース会社の社員が自宅を訪れ契約した場合、特定商取引法の適用により、クーリングオフ期間内なら契約を解除できます。
クーリングオフの旨が契約書に記載されているケースでは、書面交付から8日間は契約の解除が可能です。記載されていないケースでは、正しく記載された書面の交付から8日間は契約を解除できます。
ただし、契約したのが事務所である場合や、自ら契約を希望すると告げて担当者を自宅に招いた場合はクーリングオフ適用外なので、気をつけてください。
順に解説していきます。
結論からいえばオーナーが業界に詳しく、サブリースの知識があれば成功しやすくなります。
サブリースで上手くいかない理由は、仕組み自体が非常に複雑で分かりにくいためです。業界と不動産運用、サブリースについての知識があれば、メリットを享受しながら不動産投資で成功できます。
そのためには建物の施工会社と管理会社の信頼性が重要です。二つの会社の施工実績、管理実績やその特徴を理解してから事業に取り組めば、サブリースでも問題なく経営できます。
また、不動産があるエリアの市場調査を行ったり、自分でもできる空室対策にも目を向けることが大切です。
サブリースを「任せて安心」ととらえるのではなく、あくまで自分自身の事業だと認識しながら経営していくことが肝心なのです。
女性専用シェアハウスの経営をサブリースで提案する内容となっており、35年間の家賃収入を保証するものであったため、魅力的な不動産投資として人気がありました。
しかし、サブリース会社が契約内容を守れず、オーナーに支払い賃料の減額請求をしたあげく、最終的には賃料支払いができずに会社自体が経営破綻しました。
この事件は、サブリース会社と建築会社の間でキックバックがあったことや、金融機関との癒着などの問題もありましたが、サブリース運営の問題点にフォーカスした場合、相場に合わない家賃設定や空室リスクを過小評価していたことがあげられます。
このような事態を避けるためには、会社の提案を鵜呑みにせず自分で市場や立地、近隣の賃貸相場を確認することが大切です。
また、市場は少しずつ変化するため、物件周辺の変化に目を向け続けることも必要でしょう。
これにより、自己所有物件の管理を除く賃貸住宅管理戸数が200戸以上の賃貸住宅管理会社は、賃貸管理業登録をすることが義務づけられるようになりました。
登録申請は、賃貸住宅管理業登録等電子申請システムを利用して行うことが原則となっており、登録有効期間は5年間となっています。
また有効期間満了後には更新申請する必要があることも定められました。
この手続きがなされていない会社はサブリース会社として認められていないことになります。
信頼できる管理会社を見極める一つの材料になるでしょう。
ここでサブリースのメリットとデメリットをまとめてみましょう。
まずは事業の安定性です。決まった賃料が毎月必ず支払われる仕組みには安定性があります。
入退去時の修繕費についても、区分さえ明確にしておけば予定外の支出が発生することもなく、安定的な経営が可能です。
建物の定期的なメンテナンスや入居者とのさまざまな交渉を一括して管理してもらえる点も、本業で忙しい人や高齢者、遠方住みで迅速な対応が難しいオーナーはメリットに感じられるはずです。
サブリース会社にとってのサブリースのメリットは、オーナーの代行で賃貸管理を行う代わりに、家賃の10〜20%を徴収できる点です。入居者募集や清掃のような単なる物件管理では、獲得できる手数料は家賃の5%が限界なのです。
もう一つのメリットは、賃貸運営のすべてで思うようにできる点です。
通常、入退去の折にはオーナーと協議して募集家賃を決めたり、修繕の負担割合をどうするかなど、調整しなければなりません。
オーナーとの調整は心理的にも負担がかかるものであり、会社に一任してもらえるサブリースは、賃料だけではない大きなメリットがあるのです。
また、一定のリース料が支払われるものの、業務委託分が差し引かれてしまうので、サブリースでないほかの物件と比べて収益性が低くなる恐れがあります。
サブリース案件はサブリース会社主導になりがちで、ともすれば契約解除されてしまう不安から、我慢して経営を続けなければならない場合がある点も、デメリットといえるでしょう。
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