賃貸管理コラム

サブリース物件は売却価格に影響がある?解約に必要な正当事由や流れを解説

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サブリースのメリットとして、入居者との面倒なやりとりを管理会社に任せることができる点を挙げるオーナーは多いようです。

オーナーや管理会社は、安定した賃貸経営が長きにわたり続くことを目標に、運営を行います。しかし、万が一様々な理由で物件を売却することになった場合、サブリース物件はどのように売却すれば良いのでしょうか。

今回は、サブリース物件の売却に関するポイントや売却価格について解説します。現在、売却する予定がない場合でも、万が一の備えとして理解・把握しておきましょう。

サブリース物件は売却できる?

一般的にサブリース物件は売りにくいと考えられています。なぜサブリース物件は売りにくいのでしょうか。また、それでも売りたい場合どうすればよいのでしょうか。

サブリース物件とは?

サブリースとは、サブリース会社がオーナーから賃貸住宅を借りあげ、入居者に又貸しする契約形態です。

オーナーの契約先は賃借人であるサブリース1社に集約されます。

多くの場合は、契約時にシミュレーションした満室時の賃料の80~90%が最低保証として支払われます。

それに対し一般的な管理委託方式では、大家が貸し主となり入居者と直接賃貸借契約を締結します。

サブリースと異なり、空室時の保証はありません。空室がでれば収入がゼロになってしまいます。一方で、不動産管理会社に5%で委託すれば、全体賃料の95%ほどが大家の取り分として残ります。

サブリース物件は売却価格が下がる可能性がある?

サブリース物件は、オーナーへの負担は少なく、空室リスクを考えなくてよい魅力があります。しかし、一方でサブリース物件は売却にてこずることが多いという声もあるのです。

その理由は、収益性が低く、大家の立場が弱いと考える人が多いからです。詳しく見ていきましょう。

収益性

サブリースでは通常の80~90%程度しか大家に入ってこないため、一般的な物件に比べて購入価格に対する期待利回りが低くなってしまいます。

また、物件が老朽化すると、サブリース会社から借り上げ家賃を下げられる可能性もある点も、賃貸経営上のリスクと見なすようです。

空室などのリスクをおそれず、高い収益性を求める投資家からは魅力が低く感じられてしまいます。

大家の立場が弱い

サブリース契約では大家が貸す側で、サブリース会社が借りる側です。

借地借家法には、建物を借りる人を保護するため、貸す側からの解約には「正当事由」が必要という条文があります。大家からサブリース会社への契約終了を行うことは難易度が高いのが現状です。少し、注意が必要なので、この点については後述します。

サブリース物件の売却方法

サブリースがついたままでも、通常の物件と同様に売却にだすことは可能です。

サブリース物件を売却した場合、サブリース会社との契約は次の買主にそのまま引き継がれます。

しかし既に説明したとおり、サブリース契約はサブリース会社に賃料の10~20%を支払い、契約更新時に保証賃料が引き下げられるリスクもあります。そのため、投資利回りが下がることになり、より高く売るためには、サブリース契約を解約した上での売却が得策となります。

サブリース契約を解約してから売ることはできる?

アパートの模型を手に悩む人

サブリース契約は一度締結してしまうと、オーナー側からは解約が難しくなるケースもあります。

将来的にもし売却を考える可能性があるのであれば、契約時に「売却の際に解約ができる」特約を入れておくといった方法もあります。

契約書の内容を確認する

国土交通省は、大家とサブリース会社との間で交わされるべき契約書のひな形として、「特定賃貸借標準契約書(令和3年4月23日更新)」を公開しています。

しかしそのひな形でも、大家からの解約に関する条文は記載されておらず、特約として契約に入れる場合は「借地借家法第28条の正当事由が少なくとも必要である旨を記載しなければならない。」と注意書きをしているに過ぎません。

契約満了時の取り扱いについても、以下の条文のとおり「正当事由が必要」としているため、契約を終了する上では正当事由をどのようにして交渉するかよく検討しましょう。

(契約期間)
第2条 契約期間は、頭書(2)に記載するとおりとする。
2 甲及び乙は、協議の上、本契約を更新することができる。
3 甲又は乙は、本契約の更新を希望しない場合には、契約期間の満了の1年前から6か月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知(以下「更新拒絶通知」という。)をするものとする。ただし、甲による更新拒絶通知は、借地借家法(平成3年法律第90号)第28条に規定する正当の事由がなければすることができない。

参考:国土交通省「建設産業・不動産業:賃貸住宅管理業法 法律、政省令、解釈・運用の考え方、ガイドラインについて

サブリース契約を解約するためには、まずは契約書で以下の条文があるかを確認しましょう。

大家からの解約に関する条文

契約書に解約条項が設けられている場合は、その条文に従ってスムーズに解約できます。

大家から解約できるという条文があるかを確認しましょう。

一般的には、大家から解約されると自社の収益がなくなってしまうため、サブリース会社が用意する契約ひな形では大家からの解約条項が記載されていないことが多いようです。

解約に関する違約金に関する条文

大家からの解約条項が定められている場合は、解約申し出の期限や解約に伴う違約金などが記載されています。

その場合は、その違約金を支払えば合意解約できます。違約金はサブリース会社により異なりますが、賃料の数カ月分などといった条件設定をすることが多いです。

正当事由について

「正当事由」とは、土地や建物の賃貸借契約において、賃貸人が契約の更新を拒絶したり、解約の申し入れをする際に必要とされる正当な理由のことです。

借地借家法では、賃借人は賃貸人から退去を要求されても、正当事由がなければそれを拒否することが認められています。

何があれば正当なのかは法律上明確に定められているわけではありませんが、これまでの判例では以下の事例が正当事由として認められています。

  • 大家自身の居住など、大家が建物を使用する必要が生じた場合
  • 建物が老朽化し建て替える必要性が生じている場合
  • 大家のローン返済が困難となり、生計を維持するために売却が必要な場合
  • 賃借人であるサブリース会社が度重なる賃料滞納などを行い、解約することが相当と考えられる場合
  • 大家から賃借人へ立退料を支払う場合

残念ながら「大家が売却するため」だけでは正当事由としてはみなされていません。

それ以外の正当事由も特にない場合は、大家からサブリース会社へ立退料を支払わなければ契約を終了できない可能性が高いでしょう。

解約の流れ

サブリース契約を解約する際の流れをご説明します。

解約したい場合、サブリース会社に対しメールや電話で相談した後、解約通知書を送付します。

大家からの解約には正当事由が必要なため、解約通知書には正当事由となる理由をきちんと記載するようにしましょう。

この際、後々係争に発展する可能性も踏まえ、メールや書面など証拠が残る方法でやりとりすることをおすすめします。

無事、合意解約することができれば、各入居者に対してオーナーチェンジがあった旨を記載した案内を送付し、賃貸人変更の合意書を締結します。

この際、各入居者との賃貸借契約は、サブリース会社と入居者が交わした条件をそのまま引き継ぎます。

サブリース会社から各入居者との賃貸契約書、預り敷金、鍵など受領すれば、無事手続きは完了です。

解約できない場合

サブリース会社が解約を拒否した場合、大家は以下の2つのどちらかを選択しなければなりません。

  • サブリース物件のまま売却する
  • サブリース会社に対して解約を認めさせるための裁判を起こす

裁判は費用と手間がかかる点で大家への負担が重く、正当事由がないようであれば大家側が勝つことは難しい可能性があります。

そういったことから、現実的には大家が立退料を支払い合意解約することが多いようです。

裁判を起こすのが妥当かも含め、弁護士などの専門家と相談しながら慎重に判断しましょう。

サブリース契約を維持して売る

サブリース契約を解約できないようであれば、サブリース契約を維持したまま売却する必要があります。

適正な時期に売却する

前述したとおり、サブリース物件は知識のある投資家からは好まれません。しかし、適正な時期に実力のある不動産仲介会社と協力すれば売却することは可能です。

なお、最も売却に適した時期は、新生活にあたり不動産市場が活発となる1~3月といわれています。

公益財団法人東日本不動産流通機構が毎月公表している「Market Watch」の中古マンション成約状況でも、首都圏では2019年、2020年ともこの時期が最も中古マンションの成約件数が多いです。

需要が高まるこの時期に合わせた売却がおすすめです。

専門家と相談しながら進めよう

まとめとなりますが、サブリース契約の場合、契約上はサブリース会社が賃借人(借りる側)です。借地借家法では賃借人が保護されるべき対象として守られているので、大家から解約するハードルはとても高いです。

サブリース会社はこういった法律知識に詳しいため、法律を盾に不利な交渉を強いられた事例も多数有ります。

そのため、サブリース物件の売却は、専門家と相談しながら慎重に進めることをおすすめします。物件売却を仲介する不動産仲介会社や、万が一係争になった場合は弁護士など、プロの第三者の協力を要請し、うまく進めるようにしましょう。


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