マンションの騒音トラブルにまつわる判例集
集合住宅の住人同士で起こるトラブルの代表的なものとして、騒音問題があげられます。住人同士の配慮や、管理者の努力によって訴訟に発展する前に予防し、解決することが大切です。
床のリフォームには遮音性の配慮を
とあるマンションの一室で、新たにフローリング工事をしたことにより、下の階に住む人が騒音に悩まされるようになり、不眠症になった末に転居しました。その後、その騒音による精神的慰謝料と建物の減価分による財産毀損の被害についての損害賠償を求める訴訟を提起しました。
上の階に住む人が工事に使用したフローリング材は遮音性能に優れているものではありませんでしたが、下の階に住む人から苦情を受けてからは、子どもがおもちゃなどを使わないようにしたり、絨毯を敷いたり、騒音が出ないよう対策をしていました。
その後の裁判の結果、下の階に住む人の慰謝料と損害賠償を求める訴えは棄却されました。その理由は、フローリング材の遮音性能が十分でなかったとしても、下の階の人の財産毀損と認めるには不十分であるという判断に至ったためです。
リフォームで畳や絨毯をフローリングに変更することは、よくあることです。この判例では上の階の人には非がないという判決となりましたが、状況によっては損害賠償請求されることもあります。リフォームで床を変更するときは遮音性にも配慮することが必要といえそうです。
騒音で慰謝料を請求される場合も
また別のマンションでは、3~4歳の子どもが跳ねたり、走り回ったりすることにより、下の階の住人がその騒音に耐えられないとして裁判所に慰謝料を求めて訴訟を提起しました。
実際の騒音の程度は通常の人が不快に感じるような音量であり、夜から深夜にまで至ることがありました。長時間に及ぶこともあり、下の階の人は精神的にも身体的にも消耗してしまいました。上の階の人に伝えたところ、床にマットを敷くなどの対応はしてくれたものの、聞き入れてもらえなかったり、不誠実な対応をとられたりすることも多かったという背景があります。
裁判の結果、下の階の人の訴えが認められ、慰謝料30万円という判決が下りました。物音を全く発生させずに生活することは出来ませんが、明らかに許容範囲を超えたと判断されれば、慰謝料請求の対象となります。
万が一、騒音によって苦情が寄せられた場合でも、迅速に対応をとることで訴訟を避けられる可能性があります。入居者への誠実な対応は、トラブルを最小限に防ぐ上で重要となります。
騒音の濡れ衣には要注意
生活騒音は誰が出しているのか特定するのが難しいことがあります。
同じマンションに住む区分所有者Bが区分所有者Aに対して、ゴルフの練習をしている音がうるさいと騒音の苦情を出しましたが、Aは思い当たらないと否定しました。にもかかわらず、Bは管理組合の総会や理事会でAの騒音について名指しで批判しました。
そのためAは名誉毀損としてBに対し損害賠償を請求し、BはAに対し反訴して騒音を差し止めることと損害賠償を請求しました。
裁判の結果、Aが騒音の発生源である事実は認められないという判決となりました。Bは管理組合の総会や理事会など公の場で、確証もないままAの社会的評価を下げるような発言を繰り返したことが名誉毀損にあたるとしました。
確証もない時点での決め付けは名誉毀損にあたる可能性がありますので、注意したいところです。
注意喚起が騒音トラブルの予防につながる
これらの騒音トラブルは訴訟にまで発展してしまった事例ですが、騒音を完全に防ぐことは不可能です。音の感じ方は人によって様々であり、住人の生活時間帯や家族構成も異なるであろう集合住宅の場合には起こりやすいトラブルといえるでしょう。
しかし、よくあるトラブルであるからこそ、対策はたてやすいのです。判例を参考にして、住人に対して定期的に注意喚起していくことがトラブルの予防にもつながります。