賃貸管理コラム

賃貸経営を成功させるうえで、管理会社との良好な関係は欠かせません。しかし実際には、管理会社の対応に不満を抱えるオーナーは決して少なくありません。ある調査(※)によれば、8割以上のオーナーが管理会社の対応に何らかの不満を持っているという結果も出ています。
※=アセットテクノロジー「賃貸管理会社の対応品質に関する実態調査」
では、なぜこれほど多くのオーナーが管理会社との間にトラブルを抱えてしまうのでしょうか。賃貸経営において頻繁に発生する管理会社とのトラブル事例を詳しく解説し、トラブル発生時の正しい対処法から管理会社変更の手続きまでを紹介します。
管理会社とのトラブルは多岐にわたりますが、その多くはコミュニケーション不足や業務品質の問題に起因しています。国土交通省が実施した「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査」では、管理業者が実施する業務として「苦情対応」「敷金精算・原状回復」「契約更新」が8〜9割程度となっている一方で、これらの業務をめぐるトラブルも数多く報告されています。特に頻度の高いトラブル事例について見ていきましょう。
管理会社への不満で最も多く挙げられるのが、レスポンスの遅さです。緊急を要する設備トラブルや入居者クレームへの対応が後手に回れば、物件の評判低下や入居者の退去につながりかねません。
さらに深刻なのは、担当者に電話しても不在が続く、折り返しの連絡がないといったケースです。オーナーとしては自身の大切な資産を預けているわけですから、適時・適切なコミュニケーションが取れないことへの不安は大きなストレスになります。
騒音問題や設備不良、近隣トラブルなど、入居者から寄せられるクレームへの対応品質も、管理会社の評価を左右する重要なポイントです。クレームへの初動が遅れたり、問題の本質を理解しないまま場当たり的な対応を繰り返したりすれば、入居者の不満は増幅していきます。
特に騒音トラブルでは、音の発生源の特定が難しいケースも多く、不用意に特定の入居者を犯人扱いしてしまうと、新たなトラブルを引き起こす恐れがあります。管理会社には冷静な情報収集と、トラブル解決に向けた合理的な判断が求められますが、経験不足やマニュアル対応に終始する管理会社では、問題が長期化してしまいます。
建物や設備の経年劣化に伴う修繕は、資産価値を維持するために欠かせません。しかし管理会社からの修繕提案が遅れ、不具合が深刻化してから初めて対処するといったケースは珍しくありません。定期的な巡回点検が形骸化していたり、修繕の必要性を見極める能力が不足していたりすることが原因です。
また、修繕費用の見積もりが相場より明らかに高額であったり、工事内容の詳細な説明がないまま請求書だけが送られてきたりするトラブルも報告されています。管理会社が自社の関連業者に発注することで中間マージンを得ているケースもあり、オーナーの利益よりも自社の収益を優先しているのではないかという疑念を生む原因になります。
退去時の原状回復や敷金精算をめぐるトラブルは、国土交通省の調査でも頻出する問題として挙げられています。オーナー側は「なるべく多くの費用を入居者負担にしたい」と考え、入居者側は「敷金を返してほしい」と考えるため、利害が対立しやすい領域です。
管理会社の中には、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を十分に理解しないまま、慣習的な判断で費用を算定しているケースもあります。その結果、入居者からクレームが入り、最終的にオーナーが不本意な金額で妥協せざるを得なくなることもあります。また、清掃や原状回復工事の質が低く、次の入居者募集に支障が出るケースも見られます。
家賃滞納は賃貸経営における深刻なリスクですが、管理会社の対応が後手に回ることで問題が悪化するケースがあります。初期段階での督促が甘く、滞納が数カ月に及んでから初めてオーナーに報告されるような事態は避けなければなりません。
契約時に督促のフローやタイミングが明確になっていない管理会社では、担当者の判断に任されることが多く、対応のばらつきが生じます。また、滞納者への督促を躊躇するあまり、法的措置のタイミングを逃してしまうケースもあります。家賃滞納への対応が遅れれば遅れるほど、回収は困難になり、オーナーの損失は拡大していきます。
管理会社が日々どのような業務を行っているのか、空室状況や入居者対応の進捗はどうなっているのか。こうした情報がオーナーに適切に共有されないことへの不満も多く聞かれます。
定期的な報告がなく、オーナーから問い合わせをしてようやく状況が分かるような状態では、管理を任せている意味が薄れてしまいます。また、収支報告書の内容が簡素すぎて、どこにどれだけの費用がかかっているのか把握できないという不満も聞かれます。
サブリース契約は家賃保証が魅力ですが、トラブルも多い契約形態です。国土交通省の調査によれば、サブリース業者が契約締結時に家主に対して説明している内容として、「将来の家賃変動の条件」「賃料の固定期間・改定時期」「空室のリスク」「賃料減額のリスク」がいずれも6割程度にとどまっており、十分な説明がなされていない実態が浮き彫りになっています。
契約当初は「30年間家賃保証」などと謳われていても、数年後には「周辺相場が下がった」などの理由で一方的に家賃減額を通告されるケースは後を絶ちません。借地借家法上、サブリース会社には賃料減額請求権が認められているため、オーナー側が不利な立場に置かれやすいのが実情です。
管理会社とのトラブルが発生した場合、感情的な対応は事態を悪化させるだけです。冷静に、かつ段階的に対処していくことが重要です。まずは契約内容の確認から始め、証拠を残しながら交渉を進めましょう。
トラブルが生じたら、最初に行うべきは管理委託契約書の内容確認です。契約書には管理業務の範囲、報告義務、修繕の承認フロー、解約条項など、重要な事項が記載されています。管理会社の対応に問題があると感じても、それが契約上の義務違反に該当するのか、それとも契約の範囲外の期待なのかを見極める必要があります。
特に確認すべきポイントは、管理業務の具体的な内容、報告の頻度と方法、修繕工事の承認権限と金額の上限、解約時の予告期間や違約金の有無などです。契約書の解釈が分かりにくい場合は、専門家に相談することをおすすめします。
管理会社との交渉では、後々のトラブルを防ぐために、やり取りの記録を残すことが極めて重要です。電話での口頭のやり取りだけでは、「言った・言わない」の水掛け論になりかねません。重要な要件はメールで送るか、電話の後に内容をメールで確認する習慣をつけましょう。
やり取りの記録として残すべき内容には、いつ・誰と・どのような内容の連絡をしたか、管理会社からの回答や約束した内容、対応期限などが含まれます。トラブルの内容によっては、現場の写真や動画、第三者の証言なども有効な証拠になります。これらの記録は、万が一法的措置を取る場合にも重要な資料です。
管理会社に改善を求める際は、具体的かつ明確に伝えることが重要です。「もっとしっかりやってほしい」といった曖昧な要求では、管理会社側も何をどう改善すればよいのかわかりません。「空室状況について毎週金曜日にメールで報告してほしい」「修繕の見積もりは3社から取って比較検討したい」など、具体的な行動を示しましょう。
改善の期限を設定することも効果的です。「来月末までに報告体制を改善してほしい」「次回の退去時から原状回復の見積もり方法を変更してほしい」といった形で、いつまでに何を改善するのかを明確にします。期限を設けることで、管理会社側も優先順位をつけて対応しやすくなり、オーナー側も改善の有無を判断できるようになります。
管理会社に改善を求めても状況が変わらない場合は、第三者機関への相談を検討します。まずは、管理会社が所属する宅地建物取引業協会や全日本不動産協会などの業界団体に相談する方法があります。これらの団体には苦情相談窓口が設置されており、会員である管理会社に対して指導や改善要請を行ってくれます。
消費者生活センターや各自治体の不動産相談窓口も利用できます。さらに深刻なトラブルで法的措置を検討する場合は、不動産トラブルに詳しい弁護士への相談が必要です。弁護士会の法律相談センターでは、初回相談を無料または低額で受けられる場合があります。
改善の見込みがないと判断した場合、管理会社の変更を検討することになります。管理会社の変更は決して珍しいことではなく、より良い管理体制を求める前向きな判断として捉えるべきです。ただし、スムーズな切り替えのためには、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。
管理会社を変更する際は、まず現在の管理委託契約における解除条項を確認します。多くの契約では、3カ月前や6カ月前など一定期間前の予告で解約できる旨が定められています。また、契約期間の途中で解約する場合に違約金が発生するかどうかも重要なチェックポイントです。
近年は「オーナーはいつでも解約できる」という契約を結ぶ管理会社も増えていますが、一方で高額な違約金の支払いなしには解約できない契約を求める管理会社もあります。契約書の解約条項をよく確認し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けながら進めることが賢明です。
管理会社変更の決定後は、入居者への通知が必要です。管理会社が変更されることで、家賃の振込先や緊急連絡先、トラブル時の対応窓口が変わるためです。入居者に混乱や不安を与えないよう、変更の時期と新しい管理会社の連絡先を明記した通知書を、遅くとも変更の1カ月前までには配布しましょう。
また、新旧の管理会社間で引継ぎ資料の受け渡しを確実に行う必要があります。入居者の契約書類、敷金・礼金の預かり証、修繕履歴、鍵の保管状況、未解決のトラブル案件など、管理に必要な情報は漏れなく引き継がなければなりません。オーナー自身も引継ぎのプロセスに立ち会い、重要書類が確実に移管されているか確認することをおすすめします。
管理会社の変更をスムーズに進めるためには、新旧両社との良好なコミュニケーションが不可欠です。旧管理会社に対しては、感情的にならず、淡々と事務的な引継ぎを求める姿勢が重要です。批判や非難は控え、「経営方針の変更のため」などの理由で変更を伝えれば、無用な軋轢を避けられます。
新管理会社に対しては、過去のトラブル事例や改善してほしいポイントを率直に伝えましょう。前の管理会社で不満だった点を共有することで、新しい管理会社は同じ失敗を避けることができます。また、変更のタイミングは月の切り替わりや契約更新時期に合わせると、家賃の精算や入居者対応がスムーズになります。
そもそもトラブルを防ぐためには、最初の管理会社選びが極めて重要です。管理委託料の安さだけで選ぶのではなく、総合的な管理能力を見極める必要があります。優良な管理会社を見極めるためのポイントをご紹介します。
管理会社を選ぶ際に最も重視すべきは、実際に物件を担当する担当者の質です。会社の規模や知名度よりも、日々の業務を遂行する担当者の能力や人柄が、管理品質を左右します。初回面談では、担当者の不動産知識、コミュニケーション能力、問題解決への姿勢などを見極めましょう。
質問への回答が曖昧だったり、オーナーの話を聞かずに一方的に自社のサービスを売り込んできたりする担当者は要注意です。また、担当者が頻繁に変わる管理会社も、業務の継続性という点で不安です。担当者の在籍年数や離職率なども、可能であれば確認しておくとよいでしょう。
会社全体の管理体制も重要なチェックポイントです。トラブル対応のマニュアルが整備されているか、24時間対応の緊急連絡体制があるか、定期的な社内研修が実施されているかなど、組織としての管理能力を確認します。
管理委託契約を結ぶ前に、業務範囲と費用の内訳を詳細に確認することが不可欠です。管理委託料に含まれる業務と、オプション料金が発生する業務を明確に区別しておかないと、後から予想外の請求を受けることになります。
特に確認すべき項目は、日常清掃や定期点検の頻度、入居者からのクレーム対応の範囲、修繕工事の承認フローと見積もり取得方法、家賃滞納時の督促手順、空室時の入居者募集活動の内容などです。これらを複数の管理会社で比較することで、相場観を掴むことができます。
また、修繕工事の際に管理会社が指定業者しか使えないのか、オーナーが指定する業者も選択できるのかも重要なポイントです。選択の自由度が高いほど、適正価格での修繕が期待できます。
契約前の段階から、管理会社のレスポンス速度を観察することは、将来の対応品質を予測する良い指標になります。
問い合わせへの返信がいつも翌日以降になる、質問への回答が曖昧で何度も確認が必要になるといった場合は、契約後も同様の対応が続く可能性が高いでしょう。また、報告体制についても、どのような頻度で、どのような形式で報告してもらえるのかを具体的に確認しておきます。
さらに重要なのが提案力です。単に管理業務をこなすだけでなく、空室対策や収益向上のための積極的な提案があるかどうかは、長期的な賃貸経営の成否を分けます。契約前の面談で、物件の状況を踏まえた具体的な提案があるかどうかをチェックしましょう。
管理会社選びの前提として、そもそも管理を委託するべきか、自主管理で対応するべきかということも検討してもよいかもしれません。自主管理のメリットは、管理委託料がかからず、入居者との直接的なコミュニケーションが取れる点です。物件数が少なく、オーナー自身に時間的余裕があり、ある程度の不動産知識がある場合は、自主管理も選択肢です。
一方で、本業が忙しい、物件が遠方にある、専門知識に不安があるといった場合は、委託管理が現実的です。また、入居者トラブルへの対応や法的知識が必要な場面では、プロの管理会社に任せた方が適切な対処ができるでしょう。自主管理と委託管理のどちらを選ぶかは、オーナーの状況や物件の特性に応じて判断しましょう。
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