「大家になれば安定した家賃収入が得られる」と聞いて、不動産投資に興味を持つ人も多いのではないでしょうか。しかし、実際の賃貸経営には想像以上のリスクや手間が伴います。
大家になる前に知っておきたいリスクと、その具体的な対策について詳しく解説します。
大家とは?
不動産投資というと、大きな資金が必要でリスクも高いというイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし実際には、堅実に取り組めば安定収入を得る手段として魅力的な側面もあります。
その一方で、大家業は単に家賃収入を得るだけの“楽な仕事”ではありません。まずは、大家とはどのような立場で、どのような役割を担っているのかを理解しておきましょう。
大家の仕事
大家の仕事は、物件の所有だけでは完結しません。入居者の募集、契約管理、家賃の入金確認、設備の修繕対応、退去時の立ち会いと原状回復まで、幅広い業務をこなす必要があります。入居者からのクレームやトラブルに対応する場面もあり、実務は多岐にわたります。
特に本業を持ちながら大家業を始める場合、時間や体力的な負担が想像以上に大きくなるかもしれません。そのため、多くのオーナーはこうした業務を不動産の管理会社に委託しています。専門の会社に任せることで安定した運営とトラブル回避が期待できるため、大家業が初めての場合でも管理委託はおすすめです。
大家になるメリット
大家になることで得られる最大のメリットは、安定した家賃収入です。ローン完済後には収入のほとんどが利益となるため、老後の生活資金や副収入として活用できます。また、相続税の節税対策としても有効です。
不動産は現金よりも評価額が低くなるため、相続税の課税対象額を抑えられる場合があります。
さらに、賃貸経営による赤字は給与所得などと損益通算ができるため、所得税の軽減にもつながる可能性があります。計画的に活用することで、資産形成と税務対策の両面から効果を発揮します。
大家に向いていない人の特徴
不動産投資には一定のリスクがあるため、短期間で利益を求める人やリスク管理が苦手な人には不向きです。またトラブルに直面した際に感情的になりやすい人や、人と関わるのが苦手な人も大家業に向いていません。不動産会社への管理委託を検討しましょう。
長期的な視点を持ち、問題発生時に冷静かつ柔軟に対処できる人が、賃貸経営を成功させやすいといえます。特にサラリーマンとして働きながら副業を始める場合、自分がどの程度の関与が可能なのか、事前に現実的な判断をすることが大切です。
大家になることのリスク
大家業は「安定収入を得られる投資」として注目されがちですが、実際には多くのリスクを抱えています。特に、購入時の判断ミスや、運営上のトラブル、さらには売却時の資産価値下落など、さまざまな場面で落とし穴が存在します。
これらのリスクに気づかずに参入すると、想定外の損失や経営不振に陥る可能性があるため、具体的な対策とあわせて事前に把握しておくことが重要です。
購入時のリスク
物件購入の時点で、すでに大家業の成否が大きく左右されます。価格の妥当性やエリアの賃貸需要、利回りの見方を誤ると、その後の経営に深刻な影響を及ぼしかねません。
特に初めて不動産投資を行う人は、販売業者の甘い言葉に惑わされないよう注意が必要です。
建築や購入時に高値をつかまされる
不動産業界では、表面的なメリットだけを強調して販売される物件も少なくありません。特に新築ワンルームなどは、市場価格より割高に設定されているケースがあります。
高値で購入してしまうと、想定していた利回りを得られないばかりか、売却時に価格が大きく下がり損失を抱えることにもなります。
表面利回りに惑わされる
広告によくある「利回り○%」という表記は、あくまで満室想定時の家賃収入をもとにした利回りである場合が多く、実際の経営状況とは乖離があります。修繕費や管理費、税金などのコストを差し引くと、手元に残るお金が大幅に減る可能性もあります。
特に初心者はこの罠に陥りやすく、思ったよりも利益が出ない状況に直面することもあるでしょう。対策として、実質利回りを算出し、手取り収入がどれだけ残るかをシミュレーションする習慣を身につけることが大切です。
賃貸経営でのリスク
物件を購入しても、それで終わりではありません。むしろ本格的なリスクは賃貸経営をスタートしてから発生します。
入居者対応や設備の不具合、空室リスク、管理負担など、日常的な業務の中にトラブルの種が潜んでいるからです。特にサラリーマン大家の場合、本業との両立が難しくなるケースもあり、あらかじめリスクに備えた管理体制が不可欠です。
本業で忙しいのに自主管理
管理委託費を節約しようと自主管理を選ぶサラリーマン大家もいますが、実際には夜間の設備トラブル対応や、入居者からの細かな連絡に追われることになり、精神的・時間的な負担は想像以上です。
日中は連絡が取れず、クレーム対応が遅れると入居者の満足度が下がり、早期退去の原因になることも。こうした事態を避けるためにも、本業がある人は基本的に管理会社へ委託することをおすすめします。費用はかかりますが、入居者対応や法的な知識を要するトラブルにも迅速かつ適切に対応してもらえるため、安心して経営を継続できます。
サブリース契約を過信していた
サブリースは一括借り上げで家賃収入が保証される仕組みですが「ずっと安定収入が続く」と思い込むのは危険です。実際には家賃が減額されるケースもあり、オーナーの同意なしに条件変更が行われることもあります。
かつて話題となった「かぼちゃの馬車事件」では、不動産会社が経営破綻したことで、ローンを返済できなくなった大家が自己破産する事態となりました。
対策としては、管理会社の信用力や不動産会社の経営状況を確認することなどが挙げられます。判断に迷った場合は、管理委託とサブリースの違いを相談できる第三者の専門家に意見を仰ぐのも有効です。
空室が続いて経営不振に
入居者が決まらない状態が長引くと、家賃収入が得られないだけでなく、ローンや税金、管理費といった固定費がオーナーの負担となり、経営を圧迫します。特に競合物件が多いエリアや、間取り・設備が時代遅れになった物件では空室リスクが高まります。
対策としては、入居者ニーズに合ったリフォームや設備導入を行うとともに、集客力が高い管理会社と連携することが重要です。広告や問い合わせ対応の質によっても集客が大きく変わるため、実績のある会社を選びましょう。
売却時のリスク
賃貸経営では、物件の取得や運用と同じくらい「売却時の出口戦略」が重要です。いざ物件を手放したいと思っても、希望価格で売却できない、そもそも買い手が見つからないといった事態は珍しくありません。売却のタイミングやエリアの市場動向、物件の状態によって、大きく収益が左右される点を理解しておく必要があります。
資産価値の下落
不動産は築年数の経過とともに資産価値が下がる傾向があります。また周辺に新築物件が建つなど競合が増えたことで需要が低下し、売却価格が想定を大きく下回る可能性もあります。
こうしたリスクを避けるには、購入時から「出口戦略」を意識しておくことが大切です。再開発が予定されているエリアや人口が増加傾向にある地域を選ぶと、売却時に価格が維持されやすくなります。また、築年数が経過した物件でも定期的なメンテナンスや修繕を行い、買い手がつきやすい状態を保つ努力が求められます。
大家になる方法

大家になると聞くと「物件を買えばすぐ始められる」と思われがちですが、実際にはいくつかの手順や知識、資金の準備が必要です。思いつきで始めてしまうと、購入後にトラブルが起きたり、想定外の出費に追われてしまったりするリスクもあります。ここでは、これから大家を目指す人に向けて、具体的な手順や必要な資格、資金計画の立て方について解説します。
大家になる手順
最初に行うべきは、目的と投資方針の明確化です。「老後資金を補うため」「相続物件を活用したい」など、動機によって必要な準備は変わります。次に、予算とエリアを決め、物件選定とローン審査に進みます。購入後は、賃貸管理体制を整えることが不可欠です。
自主管理するのか、管理委託するのか、運用方針を検討しましょう。また、相続などで物件を引き継いだ場合は、相続登記や賃貸契約の見直しが必要になることもあります。不安がある場合は、司法書士や不動産会社などの専門家に相談しながら進めると安心です。
大家に資格は必要か
大家業は資格がなくても始められますが、法律や契約、税金などに関わる知識が求められるため、一定の知識を身につけておくと安心です。トラブルを未然に防ぐためにも、関連する資格を取得しておくと、長期的な視点で経営に役立つ場面が多くなります。
おすすめの資格
代表的なのが「賃貸不動産経営管理士」です。これは、賃貸管理やトラブル対応、契約書類の取り扱いなど、実務に直結する知識を身につけられる国家資格です。2021年からは国家資格化されたことで、社会的な信頼度も高まりました。
もうひとつは「宅地建物取引士(宅建)」です。不動産売買や重要事項説明書などの法的内容にも対応できるため、物件購入の際に強みとなります。さらに、税金や相続の知識を補いたい人には「ファイナンシャル・プランナー(FP)」も有効です。資格取得は義務ではありませんが、将来のトラブル回避や経営判断の助けになるため、学びとして取り入れる価値は十分にあります。
必要な資金
大家になるには、物件購入費だけでなく、購入時・運用時にかかる諸費用も含めた資金計画が必要です。金融機関からの融資を受ける場合、一般的に物件価格の20〜30%程度の自己資金が求められることが多くなっています。たとえば2,000万円の物件なら、400〜600万円程度の現金が必要になります。
また、購入時には登記費用、仲介手数料、ローン手数料、火災保険料なども発生します。加えて、購入後には修繕費、広告費、管理費、固定資産税などのランニングコストも見込んでおかなくてはなりません。さらに、空室が続いた場合に備えて、ローン返済に充てられる運転資金を50万円〜100万円ほど確保しておくと安心です。
区分マンションなら比較的少額で始められるものの、戸建てや一棟アパートを検討する場合は、初期費用とランニングコストをしっかり試算してから計画を立てることが大切です。